無料ホームページ


ランドセル時代
永遠のルーズソックス
白衣のうんこ
センチメンタル20
嘆きのビューティー
加藤家
徹底討論
女で候
   ・・・・・・・  ○

チャンネルは意のまま

出会って頃の笑顔を見せて!


ダイヤモンドだね


看護学生時代に学校の遠かった私は、よく学校近くに住む群馬出身の壁信子(かべ のぶこ)のアパートに居候した。


ノブちゃんはめちゃめちゃ猪八戒似の女の子で、ぷにぷにの身体とつるつるのタマゴ肌が超キュートだった。


でも神経質でちっちゃいコトで怒るので、私たちは千回くらい喧嘩した。



それでも楽しいことを愛し、かつ面倒くさがりな2人の共同生活は『恋』や『男』という観点を抜けば、まさにパラダイスであった。



私たちは春になると江戸川を原付に乗って、大声でブリトラ(ブリーフ&トランクス)を歌いながら走った。




夜になるとノブちゃんの秘蔵のマンガ(レディコミ)を読みあさった。




ノブちゃんも私も経験がない。
チューを知ってる分、幾分私がお姉さん的存在だったが。




そんな私たちの専らの遊びは『快感★フレーズ』ごっこ。

このマンガ知ってる?

ヘタなギャグマンガより笑える。

とりあえず主役の男サクヤのキメ顔が全部一緒。

身体は右ナナメで、顔は正面。

右コマ全部使ってばーんってある。

決めゼリフはみんなこの顔。

立ち方は、おばちゃんの写真の写り方に似てる。

これが一個のコミックの中に何個あるかを探すのに夢中。


あと走ってる姿爆笑。

思いっきりシリアスなラブストーリーなのに
喧嘩して走り去る主人公

欽ちゃん走り。


このマンガの変なコマ、笑えるコマを探すのに夢中。
でも、真似したり。




そんな事を夜な夜なやりながらも、
私もノブもこのマンガに夢中。




やっぱ恋…だよね…



なんて呟いてはこの寒い少女漫画と
(主人公はみんな年下、しかも経験済み)

レディコミの溢れかえる汚い部屋で
(カップラーメンとポテチの袋)

二人して凹んだり。





でも凹んでばかりもいられない。

私たちは二十歳だし
看護婦になるし
そしたらドクターとかいるし
合コンにだって呼ばれまくりだし
憧れのナースキャップと
(廃止済み)
憧れの白衣
(ズボン傾向)




うーん



もしかしたら1年先は独壇場かもしれない!




そして私たちは
私たちの人生は到達点は何だろうと
考えた。


話し合った。



それってやっぱ女として生まれた以上、
やっぱ人生の到達点はアレでしょ!





『お姫様扱い!』





女王様でも
お嬢様でも
お殿様でもなく

O・HI・ME・SA・MA!



生まれてきたからには一度は言われたいセリフ第2位

『僕のお姫様』


第3位『俺の女に触るな』を大きく突き放してのランクイン。

(第1位の『結婚しよう』には一歩届かず。)



私たちは各々に妄想を繰り広げ、
自分が姫になった様を描いては、
布団をゴロゴロと悶えた。




そのうち

『つーかどうするよ?』

っていう具体的な話になった。


いつお姫様になってもいいように
それなりに準備しようぜって話。





そう考えた時に
私たちは初めて愕然とした。


お姫様に対して全くイメージのわかない庶民な自分に。




苦し紛れに女の子座りを繰り出した私に

ノブチンが苦し紛れに

『お姫様抱っこ』

と言った。





きゃーーーーーーー!

つーかぎゃーーーーーー!


でた!

それでた!


ぢゅどーん。




永遠の憧れ抱っこ部門第2位

『お姫様抱っこ』

第3位の『膝に横座りで抱っこ』を大きく突き放しランクイン。

(第1位の『後ろからビューネ君抱っこ』には一歩及ばず!)



『すげー信子!それだよ!それこそ姫の中の姫!』

『だよねー』

『やっぱわかってる信子は、いいとこ押さえてる!』

『当たり前じゃーん、へへ』

『やっぱさーうちらは通じ合ってる』

『ねー』

『にゅーん』

『・・・・・』

『・・・・ん?』

『あのさ…』

『うん?』

『つーかさ、はいねさ…お姫様抱っこ…ある…?』

『・・・・・』

『ないよねー。私もないんだ、ほらこの体重だし、持ちあがんないよ、はは』

『・・えっと…』

『男の子にそんなことされるチャンスなんてうちらにないしさー、ねー』

『信子…ご、ごめん…』

『…あ』


実はある。

高校の運動会でコバヤンとダンスを踊った時
人生でただ一度。

男性にお姫様抱っこして戴いた。


『あはは…あ…そっか…ほら…私…こんな…デブだし…』

そう言って、ぷにょぷにょの二の腕で涙を拭いながら笑う信子。


いとしすぎ!!!

私の母性本能

くすぐりすぎ!!!




私は意を決した。

腹を決めた。

くくった。



『信子、あのさー』

私に任せて。

『お姫様抱っこしてあげるよ』


信子が顔を上げる。

頬に涙が伝う。

でもすぐに表情が曇る。

『はいねじゃ無理だよ。持ち上がらない』

私は腕まくりして言う。

『いっとくけど私さ、バレーで筋トレしてた時
 140キロのバーベル持ってスクワットしてたから』

『マジ?』

『マジ。私が不死鳥と呼ばれた時代』

『はいねさーそれ、あんま人に言わない方がいいよ。』

とんだお姫様トーク。






私がジャージを膝までまくった頃、
信子は夏用に買ったふわふわの白いロングスカートを履いた。


形から入りたいらしい。


仕方ないので私は実習用の白いストッキングの上から
かぼちゃズボンっぽいキュロットをはいた。

そして貴公子風に髪を束ねた。
ベルバラっぽくリボンを付けた。

信子は上は緑ジャージのままのくせにピンクのスカーフを首に巻いた。


白い手袋がなかったので、2人で軍手を嵌めた。



準備は、とりあえず万端。



あとは信子を担ぐだけ。



こんな時になって
弱冠の不安が私を襲う。


それは私がバレーの第一線から離れて二年が経過してること。


いまや、駅の階段も動悸息切れな私が、
ドコまで通用するだろう。



とにかく

失敗は許されない。



信子の目が輝く。

明らかに期待した羨望。



言うんじゃなかったと

少し思う。




でも目の前に立つ重量級の白いふわふわスカートのお姫様を裏切ることはできない。





私はとりあえず、姫の前に腰を落とす。

てこの原理をいかして、何としても最大限の力を得たい。

姫が私の首に腕を回す。

私も姫の背中と腰辺りに腕を回す。






入魂。







ぐっと力を入れる第一アクションで




あ…無理っぽい…




と思った。


びくともしない。



でも後には引けない。


私は死ぬほど持ち上げた。

汗が出た。

声が出た。

赤くなった。

青くもなった。

やがてドス黒くなった。


足がワナワナ震え、床が軋み、

そしてついに信子の足が浮いた!


信子の黄色い歓声が上がる。

私の憤怒の怒声も上がる。

私たちは重力を解き放ち『お姫様抱っこ』に成功した!


しかしその1秒後、私の腕筋は極限を迎える。

思わず、無意識に、巴投げ。

自分の肉体を守るため、信子を巴投げ。

重い荷物を巴投げ。




どしーーーーっ




震度4くらい。


信子は思いっきり後転。



後転




後転




開脚後転




最後に柱に頭をぶつけた。



正気に戻り

『ノブ!!!』


と駆け寄ると

信子流血。



頭から流血。
(ちょびっと)


私たちは脳挫傷の怖さを知っていた。
(なんとなく)

私たちは頭蓋内圧亢進の怖さも知っていた。
(なんとなく)


昔は笑って暮らしてたちょっとの流血。


でも私たちは変に知識づけられた落ちこぼれ看護学生。



信子は息も絶え絶え

『死…死ぬ…』


私は過呼吸になりつつ急いで信子を抱き起こす。(禁忌)


私たちは真っ青になりながら
とりあえず病院に行くことに。


チャリの後ろに信子を乗せ
私は立ちこぎした。


『はいね…なんか…気持ち悪くなってきた…』

マインドコントロール。

『やばいよ、それやばいよ』

出川状態。


私は実習病院に向かって、死ぬほど自転車をこぐ。






夢中だった。

忘れてた。

自分が頭にリボンを付けたカボチャズボンの白タイツってことも。

ノブが緑ジャージの上にピンクのスカーフつけたふわふわスカートだってことも。




私たちは動揺してた。

死ぬかもしれない信子。(ちょびっと流血)


私は思いっきり車道に出て走った。

病院が見えてきた。

私は歩道に上がろうとした。

歩道と車道を区切る高い段差は見えなかった。

私が見えているのは、病院だけだった。


その結果、歩道に乗り上げた瞬間、
自転車が思いっきり段差に突っかかって後輪が浮いた。


すごい勢いだったタメ、私は自転車から前に吹っ飛んだ。


計算外は信子。


私の上に信子が吹っ飛んできた。



私の身体がグシャって言った。







私たちお姫様予備軍は満身創痍で病院に駆け込んだ。





夜の病院の長椅子で
顔見知りの看護婦に問診されながら
ピンクのスカーフの信子 擦り傷。
白タイツのハイネ 鎖骨骨折。




本当のロマンチックは絶対ココにある。



(補足)正しいお姫様抱っこ
お姫さまだっこ



<< はいね、いきまーす! 面影を忘れない >>

Powerd by News Handler
↓そんな私の巣窟!



脳内冬眠コラム
糸電話する?





恋文募集中