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女で候
・・・・・・・ ○
●
○
チャンネルは意のまま
出会って頃の笑顔を見せて!
グラサンに関する報告
認めます。
クールできつめの男性が好みでした。
認めます。
漫画ではグラサンかけた謎の殺し屋とか好きだったし、
ドラマではアブデカ(危ない刑事)とか好きだったし。
昔から真意の読めない人が好きでした。
ミステリアス至上主義。
そのシンボルが『サングラス』でした。
グラサン似合うニヒル最高!!
時代は変わった。
私も大人になった。
偶然のモノなんて何にもないって気づいた。
私が身につける服も靴も、みんな私が選んだもの。
店を歩き回って、試着して、サイズがなければ落胆して、それでも私が選んでゲットしてきたもの。
秘密のアッコちゃんの服が毎週変わらなくても動揺したりしなかった少女時代を過ぎ
私は生きるということを、もっとリアルに感じている。
もっと、こう、人間って生々しいよね。
死んだらみんなお化けになって皿数えちゃうような意気込みあるよね。
パトラッシュと一緒に天使になんて、そうそう召されない生き物だよね。
そう思う。
そう思う私は今、サングラスと向き合っている。
夜にファミレスに行った。
お腹がすいても、何も出てこない1人暮らし。
せめて水色の毛糸帽子から鳩一匹でも出したい。
耐え難き空腹に私はファミレスに駆け込んだ。
世も夜更け、ファミレスはガラガラだった。
私は窓際の席で、ストローの紙で遊びながら飯を待った。
すると自動ドアが開き、一人の男性が店に入ってきた。
彼はすげぇクール。
シャープなボディーと細身のジーンズ。
そしてサングラス。
私は直ぐさま、「その奥の瞳を見せて」状態になった。
彼に向かって紙テープ投げたい。
駄目。
投げたい。
無理。
投げたい!
こらえた。
でも素敵。
彼の全身にまとう空気は触わるもの皆傷つけそう。
そのせいで、きっと誤解されがち。
私がクラスメートだったら『財布を盗ったのは椎名くん(仮名)じゃないよ!!椎名くん(仮名)はそんなコトしないよ!』って言う。絶対言う。
彼は人に干渉はしないタイプ。
でもナニゲにお年寄りに席譲っちゃうんでしょ?
歩くシルバーシート精神でしょ?
そういうとこ、憎めない。
そして、無口。
「ねえねえ〜」
なんて半音高い声で甘えても、
「ん」
としか言わない人。
もう、私のこと好きなの?!ってヤキモキしちゃう。
登下校は大抵一人。
授業中は外ばかり見てる。
うわばきの踵ふんでる。
洋楽ばっか聞く。
女なんて千切っては投げ。
たまにしか笑わない。
たまにイジワル。
でも本当は私のこと心配なくせに!
多分。
多分、彼はそういう人。
私は目の前の席に座った彼のコトを想像した。
彼はどんな声をしてるんだろう。
好きな子にはどんな態度を取るのだろう。
落ち込んだ時はどうやって悩むんだろう。
すると想像はどんどんエスカレートして止まらない。
彼が雨の日に子猫を拾うとこ。
仕事でつまづいて、ひとり会議室の机を叩くとこ。
逆転のスリーポイントシュート。
あの日の告白。
一瞬だけ見せた笑顔。
想像していくうちに、私は一発で椎名君(仮名)に惚れてしまった。
こんな私の理想通りの彼(椎名君)はいない!
椎名君が好きだ!
私はうっとりと椎名君(はぁと)を眺めていた。
そんなメローなタイムをファミレス店員が邪魔をする。
『豚カツ卵とじ定食です』
ああ。
芳ばしい。
ていうか、胸がいっぱいで・・食べれるかな・・。
椎名君のほうにも注文したメニューが来た。
『ホットコーヒーです』
メロローーーーーーン。
だよねだよねだよね。
それですよね。
ほろ苦さっつーの?
椎名君は節だった長い指でカップを手元に寄せた。
ああ、その長い指がとても良い。
その指に私がいつかリングはめちゃう日が来たり来なかったり来たり!
椎名君はその手を机の脇に滑らせた。
椎名君(?)はシュガーをつかんだ。
椎名君(??)はシュガーをコーヒーに入れた。
椎名君(???)はシュガーをまた掴んだ。
椎名君(????)はシュガーをコーヒーに入れた。
椎名君(↓)は砂糖を4袋入れた。
椎名君(仮名)はミルクも半分くらい入れた。
カップは当然溢れそうになるわけで、彼(椎・・)はそれを脇から零れないように啜り上げながら美味しそうに飲んだ。
私は豚カツ卵とじ定食をガツガツ食った。
むさぼった。
腹がふくれると、思考がはっきりしてくる。
頭が回り出す。
私はもう少し、前に座る一見クールな彼のコトについて、真面目に考えることにした。
現在 23:17
誰が見ても、夜。
太陽は見る影もない。
そこに現れたサングラス。
どんだけ光に弱いっつーの。
暗視カメラかっつー話。
夜にサングラス。
夜なのにサングラス。
夜だけど、どうしてもサングラス。
私は無情の叫びを感じた。
『グラサン』 2年3組 加藤はいね
グラサンは素敵です。
グラサンをかけた人をクールだと思います。
そこで私は男の人がグラサンをかけるまでの過程をじっくり考えてみました。
男の人が『グラサンをかけた男の人』になるには、まずはグラサンを手に入れなくてはいけません。
だから当たり前のようですが、グラサンをかけている男の人は『グラサンを是非、僕はかけたい!』と思った男の人です。
私は勘違いしていました。
街ですれ違うグラサンをかけている男の人は、いつの間にか自然にグラサンがかかっている男の人だと思っていました。
『グラサンを是非かけたい』と欲した男の人だけが、グラサンをかけることができる。
いえ、意志だけでは無理なので、買いに行かなくては行けません。
グラサン売り場。
もちろんたくさんのグラサンがあります。
そこで男の人は選ばなくてはなりません。
『俺に似合うグラサン』を!
鏡の前でかけます。
色んな形のグラサンをかけます。
必死にかけます。
必死にカッコイイのを選び出します。
そして、あるグラサンを試着し、手を止めます。
『コレダ!』
自分の顔を鏡で眺めながら、このグラサンかっこいいなぁ、すげぇクールだなぁ、俺ちょっと垢抜けてるなぁ、とか諸々思いながら買います。
『これが俺に似合う!』そう思って買います。
私は勘違いしていました。
グラサンはまるで箱の中からクジを取るようにさっと選んで自然につけるものだと思ってました。
グラサンをかける人の、どのグラサンも、その人が懸命にグラサンコーナーの小さな鏡で取り合うように試着しまくって、選び抜いた、『ベスト・オブ・自分』という品だったのですね。
これからはもっとちゃんと見てみようと思いました。
そうしてついに手に入れたグラサン。
でも、買っただけでは家に置いてあるだけ。
そう買ったからには決断しなくてはならないのです。
朝起きて、窓の外を見て
『さあ今日はグラサンをかけるぞ』。
今日こそ、グラサンなのです。
鏡の前で髪をセットして服を着る、時計をはめる。
そしてグラサン。
この服にはやっぱグラサンですよね。
私は勘違いしてました。
人が外出時、グラサンを手に取る瞬間は
『あ、今日は日差しが強いな』とか
『すげぇモノモライできちゃった』とか
『泣きすぎて目が痛いの』とか
『銀行強盗しちゃおう』とか
そういう時なのかと思ってました。
『今日、俺、グラサン』
『よーし、今日はグラサンだぜぇ』
『クールにグラサンだぜぇ』
夜でも冬でも、何置いても今日はグラサンっていう日があるんですね。
グラサンというのは案外執念のアイテムだなと私は思いました。
サングラスをかけている人を見たらラッキーだと思おう。
そのグラサンは彼が選び抜いたベスト・オブ・グラサン。
それをつけた今日という日は、
私にとっては平常でも彼にとっては気合いの日。
特に夜のグラサンは必見。
彼は今、この時間をグラサンのためだけに生きているといっても過言ではないので、じっくりと見てあげたい。
これからはもっとグラサンの人を、瞼に刻みつけてあげたい。
グラサンには物語がある。
グラサンにはドラマがある。
優雅な白鳥が、水面下では藻掻くように。
サングラス
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