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女で候
・・・・・・・ ○
●
○
チャンネルは意のまま
出会って頃の笑顔を見せて!
スピード
白銀の世界が私を呼ぶ。
あぁスノボ行きたい。
(遅刻を廊下で先輩に問いつめられながら)
朝一番の雪山。
まだ誰のシュプール後も付いていないバージンスノウ。
そこに切り込む気持ちっていったらもう!
薄力粉のような雪の上を滑走。
それはもう、雲の上を駆け抜ける気分。
どうやら世界は私のためっぽい!!!!
この気持ちわかる?
かたや、今の私。
嫌み言われまくり中。
さすがに2月二回目の遅刻。
ちょっとやそっとじゃ終わらない。
汚物室の横で、
あんま患者さんに見えない位置で、
(いわゆる、看護婦の体育館裏)
それでも忙しなくドクター回診のためのワゴンを用意しながら、延々と怒られる。
『あんたさー普段患者の権利がどうだこうだうちらに言うけどさー』
あーこういう時に自分の格好良いセリフをリピートされると痛い。
『その前に自分の生活を改めなさい』
ごもっとも。
つくづくそう思います。
『だいたいあんたはねぇ、口だけなのよ』
それをもうかれこれ10年くらい言われてます。
『言っておくけど私はねぇ、仕事で見るからねっ!わかった?!』
『・あ・・はい』
『で、この心電図ではドコが異常か分かる?』
『えっと…T波が…』
『・・・ふー』
あからさまな溜息。
『え…じゃあ…えっと…』
『T波よ。何?他にドコが異常?言ってみ?』
合ってんじゃん!!
『あ・・っと、無いっぽいです…』
『【ぽい】って何よ?あんた【ぽい】で看護してんの?』
『あ・・してない・・です』
『だいたいアンタはねー』
あ、また始まった。
あーどうやら世界は私のものじゃないっぽい・・。
ぽい・・。
あー白銀の世界が私を呼ぶ。
白衣の世界じゃなくて白銀の世界。
ピン
ポヨヨォォーン
リフトのブザー音が私を呼んでる!
つーことで今日はスノボの話。
気持ちだけでも雪国!
スノーボードに一度でも挑戦した人は分かると思うけど、
スノーボードって最初の二日はホントやる気なくす。
生きる自信なくす。
それくらい全く滑れない。
滑るって何?って根本から問い直したくなるほど滑れない。
そこを耐えて耐えて滑ると、ある時魔法がかかったみたいにふわって滑れるようになる。
その魔法がかかるまでの2日間って言ったら地獄。
あ、でも、厳密にいうと滑れてる。
ヘタな時の方が滑れてる。
つーか、滑ってる。
ある意味滑りすぎてる。
滑らされてる。
滑らせらずを得ない。
(しつこい)
今日はそんな話。(あれ、さっきも言った?)
高校卒業して仲良かった男女何人かでスノボに来た。
それが私のスノボ初体験であった。
私は懲りることもなく、このグループの中に好きな男の子がいた。
つーか、そいつがスノボ教えてくれるっていうから、のこのこ来た。
仲の良い男女何人かって言ったけど、それはチョット嘘で、
仲が良いのは、私以外の何人かで、
実は私、グループ全然違うのに来た。
友達いねぇのに来た。
恋のためなら、国境も派閥も越えてやる!!
したら、そいつ風邪とか言って、休みやがった。
ソウスケーーー!!!!
(↑ 好きな人)
(↑
『面影を忘れない』
参照)
初めての体験。
友達のいない旅行。
2泊3日
もっぱら『加藤さん』って呼ばれた。
(ま、いいんだけどさ)
枕投げに入れてもらえなかった。
(別にいいんだけどさ)
疲れて寝てたらナイターに連れっててもらえなかった。
(それは、ないんじゃない?)
そんな馴染まないグループの中で、スノボ初体験。
一番悲しかったこと。
私以外みんなスノボ経験あり。
とりあえず、靴の履き方すら分からない私。
こんな心許ない「まな板」みたいなのに乗るの?
なーんて思っちゃってる私。
スノーボードと初めて対面しながら、私は不安にかられた。
つーかこれ・・・どうやって曲がるんだろ・・
ストック借りたい・・・
私はとにかく周りの人を必死で凝視し、盗み見ながら、靴の履き方を習得した。
(『私スノボ初めてなんだぁ!』)
↑ これを言うタイミングを、必死で計りながら。
『あー今日晴れてるから思いっきり滑れるじゃん!』
『楽しみー!』
『長田くん競争しようよ!』
『今回こそ、ジャンプマスターしてやるぜ』
『ココの上級結構人いなくていいらしいよ』
えっとさ・・
あれ?
あーそっか、みんな結構・・上級・・
さすがだね・・
そう言えば私ったら、好きな人に夢中で・・
みんながどれくらい上手いのとか・・さ・・
なんか色んな事・・全然考えてなかったっていうか・・
『加藤さんもさー、うちらなんて置いて、思いっきり滑っちゃってね!』
『あ・・あの・・私さー・・』
『つーか加藤さん超滑れそうだよね!運動神経良さそうだし!』
『いや・・そんな事ないけど・・』
『とかいって、すげぇ技見せてくれたりね!』
『ないない、ノーテク!・・つーか、あのね!私さー!』
勇気を出した私の声に、みんながキラキラの笑顔で振りかえる。
すげぇキラキラしてる。
滑ってやるぞって顔。
やる気満々。
パワー満タン。
『えっと・・ガンガン滑っちゃうよ!!』
言い出せませんでした。
リフトまで行く途中・・
私は死刑台に行く気持ちでした。
歩いてるだけで、3回くらい転けそうでした。
立ってるのすらままならないのに、とても滑れる気がしねぇ。
私は俯きながら、必死に板に話し掛けました。
『友達』
『君は友達』
『仲良くやろうね』
なんて必死に呼吸を整えながら、前を向いてビックリ。
私たちのメンバーは5人グループ。
このリフトは4人乗り。
いつの間にか一人だけ、後列の私。
あ・・いいんだけどね、私、ほら、お豆だし。
うん。
うん。
うん。
『じゃーお先にー!』
なんて言って、4人はスマートにリフトに乗っていった。
あ、慣れてるね。
かたや私、
肝心な場面で、
あまりに緊張して、
つるつる滑って、
あわや転ぶ!って瞬間、
係員のジャケットに捕まったら、
その人のジャケットのチャックが思いっきり開いて、
半ば脱がしたようになりながらも、
落ち着いて!なんて叫ばれちゃって
必死にバランスを取って、
そんなあまりの初心者っぷりなリフトの乗り方に、
リフトの操作員の心配げな目っていったらなくて、
リフトもすげぇ低速になった。
その甲斐あって、どうにか無事乗車。
っていうか、びっくり!
横に誰も乗ってねぇ!
4人乗りに1人乗り!!
ハジッコに乗ったせいでリフト思いっきり傾いてる!
なのに前の四人っていったら、きゃーきゃー騒いじゃって、メチャメチャ楽しそう。
池田くんが桜井さんの肩の雪をはらってあげたりして、
ヒューヒューとか言われてる。
私なんて、北風がヒューヒュー言っちゃってる。
岡田くんが調子に乗って、リフトを揺らしちゃったりして、
女の子達がキャーキャー言ってる。
その振動が少しだけ、こっちのリフトにも伝わって、
私なんて本気でびびってる。
一人キャーキャー。(面白みゼロ)
そのうち、リフトの上で写真とか取り出してる。
そして一人が気が付いたようにコッチを振り向く。
『加藤さーん!!写真取ってあげるねー!』
いらねー!!
見ないでー!!
『ピースして!!』
一人で記念撮影。
屈辱的な写真。
頂上ではみんながリフトから降りて待っててくれてる中、
リフトから下車するんだけど、
みんなすげぇコッチ見てる。
私は何とかうまく着地を決めようと必死。
初めてってことがバレないように必死。
板と呼吸を合わせながら、どうにか地に足を付ける。
ひー
さっそく揺らいだ私のケツを思いっきりリフトに押される。
ぎゃー
転ぶ!!って思ったけど、さすが私!
バランス感覚に冴えて、
何とか板に乗ったまま、スーっとリフトから滑り出した。
のも、つかの間!!!
思いっきり待ってる4人に向かって突っ込んで行った。
私がスノボが出来ると信じて疑っていなかった4人は
私の超焦った顔と、このへっぴり腰を見ても逃げず、
笑っていた。
距離にしてあと2メートルって所で
止まらない私に気が付いて
4人の笑顔が凍った。
私の顔も引きつっている。
(引きつった表情の私:・・逃げてね)
(凍った笑顔の4人:・・止まれるよね・・?)
(引きつった表情の私:・・どうやって・・?)
(凍った笑顔の4人:・・嘘でしょ?)
(引きつったの私:だから・・どうやって?)
無言の交信の末
4人は慌てて逃げようとするも
時すでに遅く、
私は4人の中に思いっきり飛び込んだ。
結果5人共倒れ。
とんだドミノ。
無言で起きあがる私。
無言で起きあがる4人。
微妙な空気が、銀世界に流れる。
『・・はは・・はは』
一人が苦肉の策を打ち出すように笑うと、
何となくつられて、他の人も笑い出して、
『転んでやんのー!』
『だってさー加藤さんすごい勢いだったし』
なんて、思い出したらチョット面白くなってきて、
私も得意のトークでも連発させて、
一気に親しくなれるかもー
なーんてほくそ笑んだ瞬間
『ははは!あんな転び方、
スノボ初心者かっつーのな!』
あ・・・。
周り爆笑。
私、少笑。
周り爆笑+疑問の視線。
私、引きつり笑い のち 真顔。
『・・え?マジ・・?』みたいな展開。
視線が5人の中を交錯する。
目に見えない光ファイバーが5人を視点にリリアン編みが始まる。
『ス、滑れるよ!』
沈黙負け。
『滑れるに決まってんじゃん、じゃなきゃ来ないよ』
失敗した。
焦るあまりに『じゃなきゃ来ないよ』のアクセントが強すぎた。
まるであなた達には興味が無い、みたいな感じで・・
『あ、足はめるから・・先滑っていいよ・・』(白目状態)
その5秒後
4人はシューって雪山に消えた。
私は1分くらいもたついて、足をはめて、とりあえず、雪山に立った。
立ったのに・・下が見えねぇのは何故?
思わず鼻水が垂れた。
びびってないよ。
びびってなんかいないよ。
ほら、私、スキーはしたことあるし、スキーでなら上級者コースだって、デコだってボコだって滑ったし、こんな雪山、全然平気。
(ストックがない)
(ストックがない)
(ストックがない)
私はとりあえず、坂から板をゆっくりと滑らしてみた。
止まりたくなったら、転べばいいやくらいの、軽い気持ちでスタート切った。
お尻を付けば止まるでしょくらいの軽い気持ち。
人生舐めてた、
雪山舐めてた、
スノボ舐めてた、
自分舐めてた。
この板野郎、とんだ暴走特急だった。
最初の5メートルくらい、イイ感じだった。
天下取ったかと思った。
ふふーんって感じだった。
ふふ・・・ん・・・
えっと
(はいね脳内解析=読み飛ばして問題なし)
物体に働く力がどのようなものかわかれば運動方程式によって、その物体の加速度を求めることができる。たとえば、その運動が等加速度運動であれば、等加速度運動の式を使って、物体の速度や位置を計算することもできる。したがって、基本的には加速度がわかれば物体の運動がわかったと考えてよい。しかし、実際には加速度が少し複雑な形をしていると、加速度の式から運動状態を直感的にとらえるのは難しくなる。(解析的に解くことができない場合もある。)このようなとき、数値的に運動の様子を計算することも行われる。ここでは、もっとも簡単な方法で運動を数値的に計算してみることにする。物体の加速度は物体の1秒あたりの速度変化を表わしている。したがって、ごく短い時間Δt秒の間加速度はほぼ一定と考えられるとすれば、この間の物体の速度変化はであり、現在の速度がわかれば、Δt秒後の物体の速度は、と近似できる。同じように、速度は物体の1秒あたりの位置の変化を表わすので、ごく短い時間Δt秒の間速度がほぼ一定と考えられるとすれば、この間の位置の変化はである。したがって、現在の物体の位置にをたせば、Δt秒後の物体の位置が求まる。
つまり速ぇぇぇぇぇえぇぇえぇぇ!!!
速ぇっつーか落ちてる!!!
これは落下だ!!
(はいね脳内解析=飾り)
v=gt 落下速度は重力加速度に落下時間を掛けた値に等しい
h=vt/2 落下距離はその時の落下速度に落下時間を掛けて2で割った値に等しい
h=gt2/2 落下距離は重力加速度に落下時間の2乗を書けてを掛けて2で割った値に等しい
これで導き出せる結果とは、運動方程式も落下速度の計算も、それを必要としているのは見ている側の客観的な人間であり、その物体本体ではないと言うことだ!
要するに社会には計算する側の人間と、計算される側の人間がいて、計算される側の人間は・・・(省略)
・・(省略)それこそが現代社会における国民と国家の関係であるのだ!
そんな私がどんな状態かというと
板に繋がれたワカメのように
私の体をバランスを崩し
板に引っ張られるばかりで
高速に駆け抜けていく景色など
見えもしない。
転ぼう!!!
私は決断した。
私は思いきってひっくり返ってみた。
私は馬鹿だっ!!
散々あんなに計算したくせに加速度による衝撃を舐めていた。
傾向と対策。
計画と実践。
私の予定では転んだら
『ズサー』って感じ。
もしくは
『ズコー』って感じ。
ちょっと激しくて
『ドッテン』って感じ。
でも実際は違った。
転んだ時、
地に腰を着いたはずなのに
私は何故か、
宙を舞っていた。
自分でも知らないうちに、
空中でなんかの技を決めたりして、
そのまま地に落ち、
その衝撃で
五回バウンドして
止まるかと思いきや
後転で転がって
もう後転するもんかと
ケツで思いっきり踏ん張り
ケツの摩擦で
ようやく速度が止まりそうになった時
ズボンが半脱げそうになったので
慌ててケツをあげ
私のお尻はボードの上にキッチリ乗っかった。
ということは、だ
私の体はすっぽり板に乗っかった。
つまり、この瞬間に、スノボはソリと化した。
そのスピードを妨げるものなど、もう、何一つ無く。
一直線。
その弾丸(私)は
ラブラブなカップルを右と左に引き裂き
団らんを楽しむ家庭を震撼させ
華麗なシュプールを描くスキーヤー達を追い抜き
ついに私を置いていった4人組を抜き去った。
私は後ろ滑り状態だったので、4人の顔はしかと見た。
言うなれば、驚愕。
その後
私というその弾丸は、絶句する4人に鼻水も凍るような微笑を浮かべながら、数メートル先。
大きな凸凹に突撃し、それをジャンプ台にして舞い上がると、思いっきり回転して落ちた。
落ちた時、運良くか悪くか、板ごと思いっきり雪に突き刺さった。
そして、止まった。
慌てた4人が駆け付けた時、私は雪にメリ込んでいた。
死ぬかと思った。
死んだかと思った。
死んでもイイと思った。
どっちでもいいやと思った。
自力で這い出そうと思ったけど抜けなかったので、軽く泣いてみた。
とりあえず、4人に救出された時、私は自分のスノボ歴を明かさずにはいられなかった。
その後も4人は優しかったけど、
やっぱりどこか他人行儀で、
私は4人の会話にうまく付いていくことは出来ず、
ブリザードの吹き荒れる悪天候の中、
一人はぐれてしまい、
二度目の死にそうな経験をしたり、
髪の毛が凍り付いて
鼻水が氷柱になりつつ、
モーターモービルの救助隊に発見されたこととか、
その時4人がロッジでホットココアを啜ってたこととか、
すげぇ大変だったけど、
今思い出すと、まぁまぁ良い経験であるわけがないっ!!
それから3年間、スノボなんて二度とするか!って思ってたけど、また恋につられて、行ったり行かなかったり。
懲りないなって、よく言われます、はい。
スノーボード
スピード
私をスキーに連れてって
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